日常のストレスや人間関係、仕事のプレッシャーなど、うつ病の原因はさまざまです。このような状態が続くと、急に休職を余儀なくされることもあるでしょう。
このような状況に直面したとき何をすべきか、どのように対応すればよいのかを知っておくことは大切です。
この記事では、うつ病で休職するときのポイントや注意点を詳しく解説します。
こころとからだの健康を取り戻すために、ワークライフバランスの重要性を再確認しましょう。
この記事の内容
うつ病による急な休職の背景
うつ病は単に「気分が落ち込む」病気ではありません。こころの不調だけでなく、身体にも症状があらわれます。
実際にうつ病になった方のなかには「ある日突然、身体が動かなくなった」といった声も少なくありません。
このような症状は、急に職場を離れることになる背景のひとつとして考えられます。
うつ病は「気分の落ち込み」「意欲の消失」「自信の喪失」といった症状が長期間にわたって続きます。これらの症状があらわれる原因はひとつではなく、さまざまな生活の出来事が引き金となるのです。
たとえば、身近な人との死別といった悲しいできごとがきっかけになることもあれば、仕事上のストレスが積み重なり、ある日突然症状が出現することもあるでしょう。
うつ病によって急に休職する背景には、原因や症状があらわれるタイミングが大きく関係しているのです。
うつ病で休職する人の割合は増えている
近年、メンタルヘルスに関する認識や理解が深まってきた中で、うつ病の存在感はますます強まっています。
実際に、うつ病は15人に1人が生涯でかかる可能性があるといわれており、決して他人事ではないのです。日本国内における統計を見ても、100万人以上が気分障害(うつ病・躁うつ病)と診断されています。[1][2]
また、メンタルヘルスの問題により1カ月以上の休職または退職した人の割合も年々増加しています。[3][4][5]
このように、うつ病を含むメンタルヘルスの問題は、私たちの生活や職場においても無視できない問題となっているのです。
うつ病が仕事に及ぼす影響
うつ病にともなう症状は、仕事や職場環境にも深刻な影響を及ぼします。
仕事にどんな影響を及ぼすのか、具体的にみていきましょう。
人との交流が減る
うつ病では、人との交流を避けたくなる症状をともなうことがあります。これは、職場での人間関係にも影響を及ぼす可能性があるのです。
たとえばランチタイムに同僚と話す時間が減ったり、メールや電話の回数が減少するといったケースがあります。
これは単なる仕事の忙しさや一時的な気分の変動ではなく、うつ病の症状のひとつとしてとらえられるのです。
また、仕事でのコミュニケーション不足は、業務上のミスや誤解を生む原因となります。上司の指示を十分に理解せずに進めてしまったり、同僚との間で認識の違いが生まれ、仕事上のトラブルや摩擦が生じてしまうこともあるでしょう。
うつ病により職場での交流が減ると、本人にとってもストレスを増加させる要因となり、さらに症状を悪化させてしまう可能性もあります。[6]
ケアレスミスが多くなる
うつ病は気分の低下や意欲の喪失、集中力の減退など、さまざまな症状があらわれます。
このような状態で仕事を続けていると、注意力が散漫になり、些細なことでミスしてしまうことも多くなるのです。
また、仕事に対するモチベーションの低下や疲労感が増加することも、ケアレスミスを生む要因となります。とくに重要な業務や繁忙期でのミスは、会社にも悪影響を及ぼす可能性があり、本人はもちろん同僚や上司からのプレッシャーを感じることもあるでしょう。
このように、うつ病によって仕事上のミスが増えれば、業務効率を低下させるだけでなく、同僚や上司との関係にも良くない影響を与えるのです。[6]
遅刻や欠席が多くなる
うつ病はこころの問題だけでなく、身体的な症状を伴います。
急に動悸やめまいがして立てなくなる症状があらわれることもあります。[7]
このような理由から、うつ病の人は遅刻や早退、欠勤が多くなってしまうこともあるでしょう。
これは、単なる気力不足ではなく、うつ病特有の症状によるものなのです。
こうした出勤に関する問題は、仕事上の評価や職場での印象に影響する場合があります。[6]
うつ病で休職するデメリット【職場に居づらくなるのが不安】
うつ病による休職は心身の回復のために必要な場合もあります。しかし、その決断にはいくつかの注意点があることも理解しておきましょう。
休職することによるデメリットとして以下の3つがあります。
- 所得が減る
- 職場でのキャリアに影響する
- 孤立感や自己否定感を抱く可能性がある
うつ病で休職すると、その期間の所得は減少します。多くのケースで、傷病手当金が支給されるものの、標準報酬日額の2/3に制限されるため、実際の給与と比べると収入は下がってしまうのです。[8]
また、休職は上司や同僚に対してネガティブな印象を与えてしまう可能性があります。職場でのキャリアに影響することもあるでしょう。加えて、復職後に業務内容が以前と変わってしまい、うまく適応できなくなることもあるのです。
休職中は社会とのつながりが少なくなり、孤独感や疎外感を感じることもあります。自分の状況が周囲から理解されにくいため、自己否定の感情に陥る人[9]もいるのです。
とはいえ、これらのデメリットを避けるために体調を無視して働き続ければ、うつ症状を悪化させてしまう可能性もあります。[10]
休職して治療に専念することで、より早く症状を改善でき、復職して会社に貢献できるケースも多いのです。
心身の健康状態や復職の見通しを立て、医師と相談しながら適切に決断することが大切です。
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うつ病で急に休職するときに必要な心構え【職場に連絡は必要?】
うつ病で職場を離れるときには、多くの葛藤や不安があるでしょう。
しかし、こころの健康を取り戻すためには、休職を前向きにとらえることが大切です。
うつ病で仕事を休むときの心構えをまとめました。
休職は治療の一環であると受け入れる
うつ病の治療では、薬物治療だけでなく生活リズムを整えたり、ストレスの原因から一時的に離れることも大切です。[6]
休職は治療の一部ととらえ、心身の健康を回復するための手段として受け入れましょう。
過度な罪悪感を持たない
仕事を休むことにより、職場の同僚や上司に対して罪悪感を感じることもあるでしょう。ただ、過度に自分を責めることでうつ病の症状を悪化させる可能性もあります。
休職を決断したら、自分の健康を第一に考えることが大切です。
休職の理由をきちんと伝える
職場に対して、自身の状態や休職の理由をきちんと伝えることは大切です。
休職理由を曖昧にしてしまうと、予期せぬ誤解を生み、信頼を損ねてしまう可能性もあります。
うつ病であるという事実を誠実に伝えることで、復職したあとも職場での理解やサポートを受けやすくなります。
うつ病での休職期間中のセルフケア【生活リズムをととのえよう】
休職中は心身の健康を取り戻すための大切な期間です。また、この期間を有意義に過ごすためには、日常のセルフケアが欠かせません。
うつ病で休職中の人が普段の生活で気をつけるべきポイントをいくつかご紹介します。
- 生活リズムをととのえる
- 軽い運動を取り入れる
- 趣味や興味を楽しむ
- 適度に人とコミュニケーションをとる
- 必要な治療を欠かさない
休職中は、多くの不安や気持ちの波があるでしょう。適切な治療を受けながらセルフケアを心がけることで、心身の健康を取り戻しやすくなります。
焦らず自分のペースで、休職期間をゆっくり過ごしてください。[11]
職場復帰するときの注意点【再発しないために復職後は無理をせず】
復職を考えるときに最も大切なのは、無理をしないことです。
自分の体調やこころの状態をよく理解し、医師と相談しながら復職のタイミングを決めましょう。
復職後も自分の能力に合わせて仕事のペースを調整し、短時間勤務から始めることも選択肢のひとつです。職場の上司や産業医とこまめにコミュニケーションをとり、自分の体調を伝え、理解と協力を得ることが大切です。
また、最近では仕事復帰のためのリハビリテーションのひとつとして「リワークプログラム」も広まっています。専門的なサポートを受けながら、復職に向けた準備を進めましょう。[12]
まとめ
うつ病は多くの日本人がかかる可能性のある病気です。メンタルヘルスの問題による休職者数は増加しており、その症状は仕事にも影響を与えます。
休職することによるデメリットもあり、本人の精神的な負担を増加させる可能性もあります。
うつ病により急に休職することに対して、罪悪感を抱く人は少なくありません。
しかし、最も大切なのは自身の健康を守ることです。
復職を考える際には自分の体調や能力をよく理解し、職場としっかりコミュニケーションをとって理解や協力を得ることが大切です。
うつ病で休職するときには、医師と相談しながら自分に最適な決断をしましょう。
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参考文献
[1]うつ病の認知療法・認知行動療法|厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/bunya/shougaihoken/kokoro/dl/04.pdf
[2]厚生労働省|こころの病気の患者数の状況
https://www.mhlw.go.jp/stf/wp/hakusyo/kousei/18/backdata/01-01-02-09.html
[3]令和2年 メンタルヘルス不調により連続1カ月以上休業した労働者または退職した労働者の状況|厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/dl/r02-46-50_kekka-gaiyo01.pdf
[4]令和3年
https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/dl/r03-46-50_kekka-gaiyo01.pdf
[5]令和4年
https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/dl/r04-46-50_kekka-gaiyo01.pdf
[6]仕事や職場でのストレスチェック 体調不良のサインや休職・復職について|職場のストレスチェック|NHK
https://www.nhk.or.jp/kenko/atc_1151.html
[7]うつ病|知ることからはじめよう 国立精神・神経医療研究センター
https://kokoro.ncnp.go.jp/disease.php?@uid=9D2BdBaF8nGgVLbL
[8]病気やケガで会社を休んだとき(傷病手当金)|全国健康保険組合協会
https://www.kyoukaikenpo.or.jp/g3/cat310/sb3040/r139/
[9]無価値観|e-ヘルスケアネット
無価値感 | e-ヘルスネット(厚生労働省) (mhlw.go.jp)
[10]こころの耳Q&A|うつ病のため、主治医から仕事をしばらく休むように言われたのですが、どうすればいいでしょうか?|厚生労働省
[11]うつ病|こころもメンテしよう 厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/kokoro/youth/stress/know/know_01.html
[12]仕事や職場でのストレスチェック 体調不良のサインや休職・復職について|休職のプロセス|NHK
https://www.nhk.or.jp/kenko/atc_1151.html
- この記事の執筆者
- 原田瑞季
臨床検査技師。保健学修士。在宅で医療検査の業務に関わりながら、フリーライターとして医療を中心に幅広いジャンルで執筆中。