朝は調子が悪くても、夕方から調子がよくなるのはうつ病の特徴なの?
うつ病では、1日の中で症状が大きく変わることがあります。詳しく解説しましょう!
「朝はうつ病の症状が強く、夕方になると回復する」このような現象に悩まされている方も多いのではないでしょうか。うつ病の方の中には、1日の中で症状が変動する人がいます。
この記事では、うつ病における日内変動のメカニズムとその対処法について詳しく解説します。
うつ病の日内変動を理解し、うまく付き合っていく方法を一緒に探っていきましょう。
この記事の内容
「夕方から調子がよくなる」のはうつ病の特徴
「夕方から調子がよくなる」のは、うつ病の特徴的な症状の一つです。[1]
朝は気分が沈んでいても、時間が経つにつれて調子がよくなるこの現象は「日内変動」と呼ばれています。
うつ病でない人でも会社や学校へ行く前に気分が落ち込むことはありますが、うつ病の方の場合は症状の程度がより深刻です。
うつ病の方は夕方になり調子が良くなると、会社を休んでしまった罪悪感を感じ、他人から怠けていると思われているのではと不安になることもあります。しかし、1日の中で症状に波がある状態は、うつ病ではよくある症状の一つなのです。「日内変動」は、うつ病の症状の特徴であると理解しておきましょう。
「怠けている」と思わなくて大丈夫ですよ。
それがうつ病の症状です。
うつ病における日内変動の原因とメカニズムとは
うつ病において症状の日内変動が起こる原因は、未だ解明されていません。
原因の一つと考えられているのは、体内時計の異常です。うつ病の方は睡眠障害を合併していることが多く、これが朝の目覚めを悪化させ、症状が朝に強く現れる原因といわれています。
また、ストレスホルモンであるコルチゾールの分泌量の変化も、日内変動に関係していると指摘されています。[2]
明確な原因は分かっていないものの、体内時計やホルモンバランスの異常などによって、日内変動が引き起こされていると考えられているのです。
規則正しい生活を心がけましょう
うつ病の日内変動と重症度は関係ない
うつ病における日内変動はこころに大きな負担を与えるものですが、必ずしも重症度と関係しているわけではありません。うつ病の重症度は、症状の程度や種類によって総合的に判断されます。
ただし、悲しい気持ちや気分の落ち込みといった症状が1日の大半にわたって続く場合は、症状が重いとされることがあります。また、症状の変動はなくても、1日中症状が続く場合は注意が必要です。
「症状がどれくらい続いているのか」ということが、うつ病の重症度の一つの指標となります。[3]
うつ病の回復期では日内変動が小さくなる
うつ病が回復期に入ると、一般的に症状の変動は少なくなります。病状が改善するとともに朝の辛い症状も和らぎ、1日の大半を安定した気分で過ごせるようになるのです。[4]
ただし、症状の日内変動がなくなったからといって、完全に回復したとは限りません。回復の過程は人それぞれであり、回復したかどうかは医師が総合的に判断します。再発を防ぐためにも、自己判断で治療を止めないようにしましょう。
焦らずにゆっくりと治療していくことが大切です。うつ病の回復期について詳しく知りたい方は下記の記事もご覧ください。
日内変動があってもうつ病の治療は変わらない
うつ病の治療は日内変動の有無に関わらず、基本的には通常の治療と変わりません。治療のおもな目的は症状を和らげることであり、日内変動がある場合でも同じです。
ただし、症状の出方や程度は人によって異なるため、治療計画はその人の状態に合わせて調整されます。日内変動がとくに強い場合は、標準的な治療に加えて臨時で薬剤が処方されることもあります。[5]
朝の症状が辛いと感じる場合には、主治医に相談してみてください。
おおかみこころのクリニックでは、いつでも相談を受け付けています。
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うつ病の日内変動と向き合うコツ3選
一日の中で症状の変動が激しいと、対処していくのが大変だと感じることもあるでしょう。
ここでは、うつ病における日内変動と向き合うコツをご紹介します。
自分の日内変動を把握する
症状の日内変動と上手く付き合うためには、まず自分自身の症状の変化を把握しておきましょう。
いつ、どのような状況で症状が強く出るのかを知ることで、自分の体調を管理しやすくなります。毎日の気分や症状の強さを、簡単にメモするだけで十分です。診察の際にも主治医に症状を伝えやすくなり、よりよい治療ができるようになります。
自分の日内変動を理解しておくことは、うつ病と向き合う上での第一歩となるのです。
規則正しい生活リズムを意識する
うつ病の治療で重要なのは、規則正しい生活リズムを保つことです。とくに日内変動は体内時計の乱れによって引き起こされることが多く、睡眠と覚醒のリズムを一定に保つことが大切なのです。[6]
毎日同じ時刻に就寝・起床し、昼間は適度な日光を浴びることで、体内時計を調整できます。
気持ちが落ち込む日が続くと、家にこもりがちになるかもしれませんが、できる限りメリハリのある生活をこころがけましょう。
調子が良くなっても無理をしすぎない
夕方からうつ病の症状が落ち着いて活動的になっても、無理は禁物です。症状が一時的に治まったからといって、完全に治ったわけではないということを理解しておきましょう。
夕方から無理をしすぎると、朝の症状の悪化につながる可能性があります。また、夜間に活動しすぎて睡眠時間が減少すると、翌朝の症状がさらに強く出ることもあります。
調子が良くなっても無理をせず、規則正しい生活リズムを保つことが、うつ病とうまく付き合っていくコツなのです。
「無理せず、ゆっくり自分のペース」を大切にしましょう
下記の記事では、うつ病と上手く付き合っていく方法を解説しています。合わせてご覧ください。
非定型うつ病(新型うつ病)では夕方に症状が強く出ることも
非定型うつ病や新型うつ病とも呼ばれるうつ病では、朝は調子がよいものの、夕方から症状があらわれることがあります。
非定型うつ病は、一般的なうつ病と異なる特徴を持ちます。このタイプのうつ病では、自分にとって好ましいことがあれば気分がよくなるため、自分が置かれている状況によって症状の出方が変わるのです。
非定型うつ病では、個々の症状に合わせた対応や治療が求められます。
まとめ
うつ病では日内変動によって「夕方から調子がよくなる」ことがあります。日内変動が起こる原因は解明されていませんが、体内時計の異常が原因の一つとして考えられています。
症状の日内変動は、うつ病の重症度や治療に大きく影響することはありません。しかし、症状の変動が激しく辛いという場合は、主治医に相談してみましょう。
うつ病の日内変動とうまく付き合っていくには、症状の出方を自分自身で把握し、生活リズムを一定にすることが大切です。調子がよくなったからといって無理をせず、コツコツと治療を続けていくことが、うつ病を乗り越えるカギといえるでしょう。
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参考文献
[1]うつ病|こころもメンテしよう
https://www.mhlw.go.jp/kokoro/youth/stress/know/know_01.html
[2]生体リズム研究の現在-時計遺伝子の機能と疾患の接点を中心として―|外科と代謝・栄養 49巻6号 2015年12月
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jssmn/49/6/49_319/_pdf/-char/ja
[3]うつ病チェック|厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/bunya/shougaihoken/kokoro/dl/02.pdf
[4]うつ病の治療と予後|こころの耳
https://kokoro.mhlw.go.jp/about-depression/ad003/
[5]日本うつ病学会うつ病看護ガイドライン|日本うつ病学会
https://www.secretariat.ne.jp/jsmd/iinkai/katsudou/data/guideline_kango_20220705.pdf
[6]不眠症|e-ヘルスネット
[7]非メランコリー親和型の気分障害を有する若年者の休業と復職支援の動向に関する研究|独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構
障害者職業総合センター
https://www.nivr.jeed.go.jp/research/report/shiryou/p8ocur00000011sn-att/shiryou90.pdf
- この記事の執筆者
- 原田瑞季
臨床検査技師。保健学修士。在宅で医療検査の業務に関わりながら、フリーライターとして医療を中心に幅広いジャンルで執筆中。