病気と障害の違いとは?こころの不調に向き合うために知っておきたいこと










「疾患(病気)」や「障害」やの違いをご存じでしょうか。

「病気と障害って、どう違うの?」

「うつ病や発達障害は病気なの?それとも障害なの?」

このように、こころの病気について調べていると「精神疾患」や「精神障害」など、似たような言葉がたくさん出てきて違いが気になる方も少なくありません。

病気と障害の違いを知ることで、あなたや大切な人のこころの問題と向き合うきっかけになるでしょう。

この記事では、精神疾患と精神障害の違い重なり合う症状への理解、そして「障害を受け入れる」とはどういうことかについて解説します。

身体疾患と精神疾患の違い

まず最初は「身体疾患」と「精神疾患」の違いについてです。

身体疾患とは、風邪や糖尿病などをいいます。

血液検査や画像検査などによって症状の原因が明らかになることが多くあります。

症状の原因が明確で、それにともない診断名がつくのが特徴です。

一方、精神疾患では、血液検査や画像診断などで明確な原因が特定できることは多くありません。

精神科の診察の多くは、問診が中心で患者さんが「何を言ったか」によって診断がつくのです。

ここでのポイントは「病名があるから症状が出る」のではなく「症状があるから病名がつく」ということ。

たとえば、うつ病であれば「うつ病だから気分が落ち込む」のではなく、「気分が落ち込む状態が続いているから、うつ病と診断される」のです。

この違いを理解することが、適切な支援や回復の第一歩となります。

では、なぜその症状が生じているのか。そこには生育環境やストレス、性格傾向など、人それぞれの理由が隠れていることがあります。

精神疾患の治療は、その背景や理由に丁寧に向き合いながら、ひとつずつ対処していくことが大切なのです。

病気と障害の違い

次に「精神疾患(病気)」と「精神障害」の違いについて考えましょう。

精神疾患と精神障害は混同されやすいですが、次のような違いがあります。

精神疾患(病気)
医学的に診断される「こころの病気」
治療によって回復が期待される
精神障害
精神疾患などが原因で日常生活や社会生活に長期的な支障がある「状態」
支援や配慮を必要とすることが多く障害者手帳の対象にもなる

たとえば、双極性障害は「気分障害(精神疾患)」に分類されますが、症状が長引き生活に支障が出ていれば「精神障害」として精神障害者保健手帳の対象になります。

精神障害者保健福祉手帳を持つことで、就労支援や合理的配慮を受けながら生活を安定させていくことができるでしょう。

合理的配慮とは、その人が困っていることを理解して、できる範囲で助ける工夫をすることをさします。[1]

たとえば、以下のようなことが挙げられます。

  • 不安が強い人には静かな場所や落ち着ける環境をととのえる
  • コミュニケーションが苦手な人にはメールでのやりとりを活用する
  • 言葉だけではわかりにくいことも視覚的に示すことで理解しやすくなる

このように「特別扱い」ではなく「公平なスタートラインをととのえる」ことが合理的配慮の目的です。

精神障害は重なることも多い

実際に精神科を受診される方の中には、発達障害・パーソナリティ障害・気分障害・うつ病など障害と病気が重複しているケースがよくあります。

たとえば、発達障害の特性に加えて、パーソナリティ障害や気分障害を発症することも珍しくありません。

しかし医療機関では、その中の「一番目立つ症状」に注目されがちです。

気分が落ち込んでいれば「うつ病」と診断されるかもしれません。

ただ、その背景に発達障害やパーソナリティ傾向があることや、表面的な対処だけでは不十分なこともあります。

複数の病気や障害が絡んで「どの要因がどの症状に関係しているのか」を丁寧に考えることが大切なのです。

「あきらめる」と「受け入れる」は違う

複数の病気や障害が重なっているとき、基本的には目立つ順に対処していきます

たとえば、まずは気分の波を安定させて自己理解を深め、発達特性に合わせた支援へとつなげていくなどです。

このように「気分障害→パーソナリティ障害→発達障害」という順で回復を目指すこともあります。

また、発達障害は「治る」とは言いにくいものの、成長とともに特性がやわらいだり環境調整によって生活がしやすくなったりするケースもあります。

障害だからといって「あきらめる」ことと「受け入れる」ことは違うのです。

まずは、障害の特性を理解し、日常生活を送ったり働いたりする中でどのような配慮があれば力を発揮できるかを考えましょう。

「自分らしく生きていく力をもつ」それが、支援や配慮の本当の目的でもあり大切なことなのです。

まとめ|病気と障害の違いを知ることが支援につながる

「病気」は治療によって回復をめざすものをさし、「障害」は生活への支援が必要な状態をさします。

精神疾患も重なり合ったり長期化したりすることで、障害としての支援が必要になることがあります。

大切なのは「診断名」にとらわれすぎるのではなく、今の困りごとや生きづらさにどう向き合っていくかです。
違いを知ることで、支援の選択肢が増え、少しでもこころが楽になるきっかけになりますように。

おおかみこころのクリニックは、一人ひとりに必要な支援を提案させていただきます。

ひとりで悩まずに、一緒に考えていきましょう。

おおかみこころのクリニック

【参考文献】
[1]事業者による障害のある人への「合理的配慮の提供」が義務化|政府広報オンライン
https://www.gov-online.go.jp/article/202402/entry-5611.html#secondSection

執筆者:浅田 愼太郎

監修者:浅田 愼太郎

新宿にあるおおかみこころのクリニックの診療部長です。心の悩みを気軽に相談できる環境を提供し、早期対応を重視しています。また、夜間診療にも力を入れており、患者の日常生活が快適になるようサポートしています。




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